でも断るのもどうかと思っていたら、見かねたお母さんがクスクス笑って言った。

「穂高さん。美沙都はもう中学生なのよ? 普通に抱きしめるだけにしてあげて」

「え? ああ、そうか。すまない」

 申し訳なさそうにする姿は少し情けなく見えて、ちょっとだけ親近感がわいた。

 だから、抱き締められるのも恥ずかしいけれど抵抗はなかった。


「じゃあ、いいかな? 美沙都」
「は、はい」

 それでも緊張していたんだけれど、優しく抱き締められふわりと懐かしさを覚えるような香りがして、その緊張もほぐれた。

 抱きしめられたことで感じることが出来た彼の霊力がわたしとそっくりだったことも相まって、この人が本当にわたしのお父さんなんだなって実感する。


「ああ……本当に大きくなった。十二年前はまだ歩くことも出来なかったのに」

 なんだかしみじみと話し始めたお父さんに、わたしは照れ隠しのようにまだ言っていなかったことを口にした。


「その、えっとね……。おはよう、お父さん」

「っ!?」

 次の瞬間息を呑んだお父さんは、そのまま小刻みに震え出す。

 え? 何? わたし何か変なこと言っちゃった?

 見上げると、お父さんはその綺麗な目からボロボロと涙を流していた。