《感情の球》もさっきとは違った少しオレンジ色に近い黄色に光っている。

 驚きと、ちょっとした興味の色。


 少なくとももう悪意を向けられたりはしないみたいと思って、わたしは《感情の球》を見るのをやめた。

「はい。赤ちゃんのときにお母さんと外に出て、最近戻ってきた感じです」

「ああ、だから見た事がないのか……。でも、子どものうちから人間の街にいて大丈夫だったのか? つい力を使ってしまったりとかしたんじゃないか?」

 表情があまり変わらないから良く分からなかったけれど、思ったより興味を持たれていたみたい。

 続けてされた質問に戸惑いつつも、わたしは答えた。


「あ、はい。わたし力の弱いサトリなので……。心の声を聞くことも出来ないし、せいぜいが感情の変化が分かるくらいで……」

 そこまで話すと、さっきつい見てしまった彼の《感情の球》のことを思い出す。

 無断で見られるのは、やっぱり気分がよくないよね……。

 見たことを話さなければバレることはないと分かっているけれど、後ろめたい気分になってしまう。

 それに、あんなにキレイな色の球を持っているこの人には誠実でありたいなって思った。