「え……? 今のって、もしかしてあの子がやったの?」
「そう、だよな? 滝柳先輩の力は風だし……」
「こんな規模の雨を降らせるなんて……雨のあやかし以外じゃあ相当霊力のあるあやかしじゃなきゃ出来ないよ?」

 ざわざわと少しずつ声が上がった。


 予想以上の注目にちょっと怖くなって風雅先輩の制服をキュッと掴むと、大丈夫だと安心させるかのように肩を抱かれた。

 怖さより、ドキドキの方が強くなる。


「え……まさか……本当に? 山の神の力?」
「母親がサトリだから、大した力なんてある訳ないって思ってたのに……」

 わたしを認めたくないって思っていた人たちの声も聞こえる。

 見ると、呆然としていたり項垂れていたり。

 これでわたしを追い出すこと、諦めてくれるかな?


「美沙都ちゃん!」

 周囲の様子を確認していると、仁菜ちゃんに呼ばれた。

 丁度山里先輩と一緒にこっちに近づいて来てくれているところみたい。


 二人とも半変転の姿で、仁菜ちゃんの猫耳姿は初めて見たのでちょっと感動した。

 仁菜ちゃん、可愛い……。

 今は雨で濡れてしまってる猫耳だけれど、濡れてなければきっとフワフワなんだろうなって思う。