とりあえず怪しいものじゃありませんよ! って見せるため、数歩前に進んで木々の間から出た。

 でもなんて言えばいいのか分からなくて言葉を紡げないでいると。


「誰だ? 見ない顔だな? 小学生か?」

 眉を寄せて男の子が続けざまに質問してきた。

 警戒されているのが分かってなおさらどうしようって思ったわたしは、思わず彼の《感情の球》を見る。


 人の心を盗み見るような行為だからあまりしないようにはしているんだけど……。

 でも、対応に困ったときとかはつい見てしまうんだ。


 彼の胸の前に現れた《感情の球》は澄んだ青色をしている。

 透き通っているのに夏の空のように濃い青色の球は、黄色と黒色が交互にゆっくり点滅していた。

 やっぱりちょっと警戒されているっぽい。

 でもモヤではないから敵認定されてるわけでもないみたい。


 そのことにホッとして、やっとわたしは彼の質問に答えることが出来た。

「えっと、数日前に引っ越してきたんです。この里の北妖中学へ入学するために」

「引っ越して? ってことは里の外――人間の街に住んでたのか?」

 軽い驚きの表情。