見上げて、その人の姿を視界に映して名前を呼ぶ。

「風雅先輩!」

 怖いくらい冷たい顔で高校生たちを見下ろしていた風雅先輩は、わたしの呼びかけに気づくと泣きそうな顔になった。


 地面に降り立つとすぐにわたしの近くに来てくれる。

「風雅先輩、心配かけて――」

 ごめんなさい、という言葉は口に出来なかった。

 その前に、引き寄せられてギュウッと抱き締められたから。


「っ!」

 驚きと嬉しさで息が止まった。

 数秒後呼吸が出来るようになると、今度はドキドキと早まる鼓動がおさまらない。


「良かった、美沙都……。ケガはないか? すぐに助けに来れなくてすまなかった」

 謝る風雅先輩の話だと、高校生たちの仲間に足止めされていたらしい。

 わたしのクラスの人たちや山里先輩も戦ってくれて、何とか今来れたんだそうだ。


「みんな……。風雅先輩も、ありがとうございます」

 みんなも戦ってくれたと聞いて申し訳ない気持ちもあったけれど、何よりも嬉しかった。

 やっぱり、わたしの居場所はこの里だって思えたから。


「……ったく、妬けるな……」

 わたしたちを見ていた煉先輩のつぶやきに、風雅先輩が警戒の色を見せる。