ここまで連れてこられてたなんて……。

「さ、デートするぞ!」

「しませんってば!」

 強引に手を取ってそう宣言する煉先輩に抵抗すると、黒い箱を見せられた。


「じゃあこれどうすっかな?」

「それっ!」

 確かコタちゃんが閉じ込められている箱だ!


「用が済めばちゃんと解放してやるよ。だから大人しくデートするぞ」

 コタちゃんを人質にデートを強要する煉先輩。

 不満はたっぷりあったけれど、拒否してコタちゃんをそのままにするわけにもいかなかった。


「分かりました。あとでちゃんと解放してくださいよ?」

 不満を前面に出しつつも了承すると、「コホン」と他の人の咳払いが聞こえた。


「日宮くん、その前に俺達の話を聞いてくれと頼んだでしょう?」

 わたしを幻術を使って眠らせた眼鏡の男子生徒だ。

 幻術の(たぐい)は狐のあやかしが得意だって聞いたから、この人は妖狐なのかな?


「ッチ、わぁったよ。行くぞ美沙都」

「……はい」

 デートでも話を聞くにしても、わたしにとっては不満しかないのでどっちでもいい。

 とにかく早く済ませてコタちゃんを取り戻さなきゃ。


 そう思ってついて行った。