問題は、そのお父さんが山の神で、わたしがその娘だってこと。

 お母さんの説明で山の神の娘だってことは理解したけれど、実感は全くなかった。


「なんて言うか、ピンとこないです」

「まあ、いきなり言われてもそうだよね」

 優しく笑った山里先輩は、その後少し真面目な顔になる。


「実感は湧かないかもしれないけれど、君が穂高さまの娘だってことは確かなんだ。ほんの一部だけれど、母親がサトリってことを良く思っていないあやかしもいる。気を付けて」

「……それ、お母さんにも言われました。大丈夫なんでしょうか……」

 そっちの不安もあったことを思い出してちょっと落ち込むと、山里先輩は元気付けるようにいつものホンワカ笑顔に戻る。


「まあ、よく思っていないとしても大したことは出来ないよ。穂高さまはもうすぐ目覚めるし、眠っている間も里の中のことはちゃんと見ているはずだから」

「そうなんですか?」

 眠っているのに見ているって、どんな状況なんだろう?

 神さま自体が良く分からないから想像も出来ない。


「だから、そいつらより今一番気をつけた方がいいのは日宮だろうね」

「日宮先輩、ですか?」

 気を付けた方がいいだろうっていうのは分かるけれど、一番っていうほどなのはどうしてなんだろう?