目が覚めて、しばらくボーッと見慣れた家の天井を見つめる。

 朝……じゃないよね?

 確か、校庭でめまいがして……。


「……夢、じゃないよねぇ……」

 つぶやいて目を覆うように両手を上げて、意識を失う前のことを思い出す。


 コタちゃんが言っていた山の神の名前――穂高さま。

 それは、お母さんに小さいころから聞いていた名前だった。

 わたしの――お父さんの名前。


 お父さんはわたしが物心つく頃にはもういなかった。

 お母さんは離婚したわけじゃないって……ただ今は会えないだけだって言っていたはず。

 会えないことはお母さんも辛いのか、聞くたびに悲しそうな顔をするからいつからか聞くのをやめていた。


 ……でも、そうだ。

 この里に戻ってくる前に一度だけ言っていたっけ。

『もうすぐ穂高さんに会えるわ……』

 って。

 お父さんがいないのが普通で、引っ越し準備でバタバタしていた時期でもあったからわたしは「ふーん」って返しただけだった。


 でもそれがまさかこんな真実が隠されていたなんて……。


 偶然名前が同じ、なんてことはないよね。

 思い返してみてもヒントになりそうなことはたくさんあった。