放課後がやってくると、くるみは予定通り祐次を学校案内していた。


今日1日同じクラスで勉強していて気がついたことは、祐次はとても記憶力がいいことだった。


クラスメートたちの顔と名前は1度の自己紹介で覚えてしまったし、頻繁に会話した男子生徒の趣味まで記憶していた。


この分なら学校案内をしなくても覚えられたんじゃないかと思う。


「ここが音楽室。芸術コースの子たちと部活動でしか使わないから、普通科の私たちにはあまり関係ない場所だよ」


そろそろ部活動が始まる時間のようで、音楽室のドアは硬く閉じられている。


中からかすかにチューニングするような音が漏れて聞こえてきていた。


「音楽室の隣が美術室。ここも同じ芸術コースの子たちが使ってる」


選択コースが違えば使う教室も違う。


しかし、自分たちが使う教室はすべて案内を終えてしまっていた。


「昨日は弟が本当にごめん」


あとは図書室を案内すれば終わりかな。


と、思っていたとき不意に祐次が足を止めてそんなことを言ってきた。


「え?」


「あいつ、変なことばかり言ってただろ」


祐次は苦い表情を浮かべる。