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夢を見ていた。


自分が立っている場所を見回してみると、それが今暮らしている家の中だとわかった。


玄関を入って廊下があり、右手に和室、左手にリビングダイニングへのドアがある。


そこに立っていると気持ちが落ちつかなくなるのを感じた。


ここにいちゃいけない。


この家は長く暮らしてはいけない場所だ。


祐次は本能的にそう感じて家から逃げ出そうとする。


しかし、夢の中の祐次はなにかに捕らわれたかのように自由がきかなかった。


これ以上家の奥へ進みたくはないのに、足が自然と進んでしまう。


そしてリビングダイニングへと続くドアの前で足を止めていた。


途端中から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


両親と弘人がいるんだろうか?


もしそうだとしても、もうどうでもよかった。


家族に声をかけることもなくこの家から出ていきたいという衝動にかられている。


それでも祐次は自分の手が取っ手にかかるのを見ていた。


そしてそれはゆっくりと開かれる。


視線を自分の手から部屋の中へと移動すると、そこには見知らぬ家族の姿があった。


両親と、その子供と思われる男の子2人だ。


4人は楽しそうに談笑しながら食事を続けている。


祐次がドアをあけたことにも気がついていなようだ。


お前たちは誰だ?


どうして俺の家にいる?


そう質問したくても、声はでなかった。