『俺じゃ頼りにならない?』
『そ、そういうわけでもなくて…』
ぐいっと引き寄せて、ちゅっと弾かせる。
それだけで俺にしか見せない顔が目の前。
『ねぇ彩。メガネ外しても可愛いと思うよ?』
『あまねくんは、コンタクトがいいですか…?』
『んー。…いや、やっぱりメガネが彩って感じするね』
普通の女の子。
どうしていじめられてるのか分からないくらい、可哀想でもなんでもない女の子だ。
だからいじめなんて嫌がらせと理不尽の延長線。
『彩、苦しかったら俺に言って』
『…大丈夫です』
『大丈夫なわけないでしょ』
『ほんとに、大丈夫なんです』
こういう子だった。
『大丈夫』が口癖。
その次に『慣れてます、平気です』って言う。
『だってあまねくんとこうして話す時間があれば、…ぜんぶ吹き飛んじゃうから』
その笑顔を信じようと思った。
俺も、信じたいと思った。
こうしていられるだけで十分だって言うような子だったから。



