同情?可哀想だから?
もしそうだとしても、だからなに?って俺は開き直れる。
『彩、また水被った?』
『…これは黒板消しを投げつけられて、洗おうとしたら蛇口を捻りすぎただけです』
『ふはっ、ドジ』
『……放っておいてください』
楽しかった。
名前で呼べるようになって、俺にしか見せない顔を見せてくれるようになって。
俺は堂々とクラスメイトにも言いたかったけど、それだけはと彩に止められて。
この倉庫裏が2人きりで居れる場所。
『風邪引いちゃうでしょ、フェイスタオルで足りるか分かんないけど』
『じ、自分で拭けます』
『いーから』
いつも緩く三つ編みに揃えられてる猫っ毛をほどいて、ワシャワシャと拭いてあげる。
ふわっと花のような香りに酔いそうにもなって、そんな俺の気持ちも知らずにされるがまま。
ほら、やっぱり幼い。
例えるならば無理やりに威厳を出そうとしている小動物。
『だれにやられたの?俺が知ってるひと?』
『…言ってもキリがないですから』
それは強がりか本心か。
それすらも俺には分からなくて。



