「…自殺、したんだ……死んだんだ、彩は」



うん、聞いた。


とある人から聞いたのが今日。

そして先輩がわたしの前で初めて涙を流したのも今日。


わたしの小さく芽吹いた想いのどうしようもない結果が目の前にあるのも今日。



「…俺は、守れてると思ってたんだよ……守ったつもりだった……っ、守って、やりたかった…っ」



責められないよ、恨めない。

先輩はいつもわたしに「もっと」と求めるけど。


そんなの、───…出来ない。



「初めて涼夏を見た瞬間、───…彩に会えたって……思った…」



それが答えだった。

彼の、正解。


期待なんかしないで生きていたはずなのに、いつからわたしはそう出来なくなっていたんだろう。



「……ごめん、…涼夏…、」



先輩のその謝罪は、わたしに対してじゃなかったと思う。

彩に対して投げた言葉だってこと。



「…歩きにくい……、」



下駄だからじゃない、浴衣だからじゃない。


その帰り道は歪んでいて。

歪んだ道、歪んだ町、景色。


初めての恋が終わった───…夏。


そして何より。











とある先輩の、歪んだ涙。