「ちょっとくらい強烈な魔法を使えるからって、いい気になるな!」



マギーがそう叫んで、余裕な表情のダーギルをにらみつけた。



「闇の魔王、ダーギル!

私の重殺剣で、お前のことを仕止めてくれよう!

我が必殺の剣を受けてみよ!」



マギーはそう言ったとほぼ同時に、ダーギルに向かって走り出していた。



リリーの魔法を吹き飛ばすほどの魔力を持つダーギルも、マギーの一撃必殺の剣は受け止めることができないはずだ。



そして、ダーギルの巨体では、きっとマギーの剣をかわすことはできない。



マギーは自分が一番得意な上段に剣を構え、ダーギルに向かってまるで飛ぶように高くジャンプした。



そしてマギーはダーギルとの間合いに入り、渾身の力で上段から剣を振り下ろした。



「一撃で決めてやる!

くらえ、重殺剣!」



(マギーの剣がダーギルに直撃する!

マギーの剣なら、もしかして一撃でダーギルを……)



僕がそう思って、固く握り拳を握ったとき、ダーギルの姿が一瞬にしてマギーの前から消え去り、マギーの剣が空を斬った。



そしてマギーが何ごとが起きたかを探ろうと左右を見回したとき、ダーギルはフロアー北の窓際で、余裕の笑みを浮かべながらマギーを見ていた。



マギーはそのとき、ダーギルが風のような速さで剣を避け、フロアーの北側に移動したことようやく気づいた。



(ダーギルの動きはものすごく速い……。

あんなに巨体なのに、一瞬で姿を消したみたいに移動しているなんて……)



僕はダーギルの魔力だけでなく、その素早さにも驚愕していた。



(でも、ダーギルが素早く動けるモンスターだとわかれば、対応する手段はある。

そして、きっとマギーも僕と同じことを考えている)



「その巨体でその身のこなし、さすがはラスボスと言っておこう」



マギーはダーギルにそう言うと、ダーギルに剣を向けた。



「だが、私にもスピード重視の技はある。

しかもその技は一撃必殺。

お前はもう私からは逃れられない!」



マギーは自分の技に自信をのぞかせ、ダーギルに向かって走り出した。



「これでどうだ?

私の新技受けてみろ。

必殺、十字剣!」



マギーの上段からの振り下ろしと、中段からのなぎ払いが、十字を描いてダーギルに襲いかかった。



僕はダーギルとマギーの高速の攻防を息をするのも忘れて、じっと見ていた。