「くらえ、リリーの風系の最強魔法。

ビッグトルネードロンド!」



リリーが怒り狂う感情の中で、魔法の杖をかざして魔法を唱えたとき、巨大な竜巻が五つ現れ、その五つの竜巻がまるでダンスを踊るかのように左右に揺れながらダーギルの分身に迫っていった。



そしてその巨大な竜巻に巻き込まれたダーギルの分身は、体をぐちゃぐちゃに引き裂かれて、最上階のフロアーから姿を消していった。



僕はそんなリリーの魔法の威力を脇目で見ながら、道具袋の中から回復薬を取り出し、ルキア姫に飲ませた。



シェーラ姫に似た美しいルキア姫は、ダーギルの雷系の魔法を受けてぐったりとしていたが、回復薬を飲んだ後、ルキア姫の目にようやく光が戻り、その美しい瞳で明彦を見ていた。



「助けてくれてありがとうございます。

あなたの名は?」



ルキア姫は女性らしい丸みを帯びた声で、明彦にそう言った。



明彦はベルミータ国の宝石と呼ばれている美しいルキア姫を見つめ、ルキア姫に言葉を返した。



「僕の名前は但野明彦。

シェーラ姫からダーギルの討伐とルキア姫の奪還の依頼を受けた賢者です」



「シェーラがあなたを……。

ありがとうございます、明彦様。

危険を顧みず、私たちのためにこんなところまで……」



「礼には及びません、ルキア姫」



僕はそう言って、ダーギルと戦っている仲間たちに少しだけ目を向けた。



すると、リリーは魔法で、マギーは剣で、ダーギルの分身たちと戦っていた。



そしてブライアンはピクリとも動けずに、最上階のフロアーで倒れていた。



僕たちのリーダー、ブライアンは最強の勇者だけれど、非情にはなりきれない。



だから、ダーギルに心の優しさをつかれて大ダメージを受けている。



僕は愛すべき僕たちのリーダーを絶対に死なせない。



ブライアンこそが、この世界を救える最強の勇者だから。



僕はそんな思いを胸のうちに抱えながら、美しいルキア姫を見つめて、ルキア姫にこう言った。



「ルキア姫、僕たちの戦いはまだ続いています。

僕は仲間を助け、敵を倒さなくてはなりません。

だからルキア姫は僕たちの後ろに隠れていて下さい。

ルキア姫が僕たちの後ろにいてくれるなら、僕たちがルキア姫を守ります。

この身に代えても、絶対に!」