「ブライアンのスケベ!

女たらし!

浮気者!

敵にやられて、死んじゃえ!」



女吸血鬼に後ろから抱きつかれて、快楽の中でだらしない顔をしているブライアンにリリーが本気で怒っていた。



リリーがブライアンを好きなことは間違いないことだったが、リリーの愛情表現は好きな人を傷つけてしまう。



普段はあんなに優しいリリーなのに、ブライアンにだけ攻撃的になってしまうのは、きっとリリーの特別な性癖のせいだろう。



「許さない……。 許さない……。 許さない……。
許さない……。 許さない……。 許さない……。」



リリーはひとりごとを繰り返しながら、木製の魔法の杖にたくさんの魔力を貯めていた。



そして、胸の奥から込み上げてくる怒りに任せて、全力で魔法を唱えていた。



「闇の魔王、ダーギルの手下は絶対に許さない!

くらえ、デスファイヤー!」



リリーが火系の最強魔法を放つと、巨大な炎が木製の魔法の杖から飛び出して、敵を次々と焼き尽くしていった。



僕がそんなリリーのすさまじい魔法に驚愕しているとき、リリーは怒りに任せてデスファイヤーを連発していた。



(リリーの魔法って、すげぇ……。

これだけの数のモンスターを簡単に倒していく……)



リリーの魔法で戦場は火の海と化し、暗闇に包まれているベルミータ国の大地を真っ赤な炎で照らしていた。



そしてリリーの荒れ狂った嫉妬心は、デスファイヤーを連発しても収まらず、禍々しい黒いオーラまで身にまとい、いつもの優しいリリーとは一変していた。



(リリーは本当にかわいいけど、彼女にしたら大変そうだ……)



僕は、荒れ狂いながらお城の西側の大地を火の海にしてしまったリリーを見て思った。



(リリーを本気で怒らせたら、命がいくつあっても足りないよ……)



リリーが魔法を連発し過ぎて、肩で息しながら休んでいるとき、リリーがある巨大な敵を見ると、急に顔色を変えて叫び出した。



「ぎゃぁぁぁ!

明彦君、助けて!

でっかいクモが出てきたよ!

リリーはクモが苦手なの!」



リリーはそう叫びながら、僕の後ろに逃げてきた。



僕はクモが苦手だと言うリリーの弱点を知って、思わず微笑んだ。



あんなに強いリリーでも、そういうところは女の子らしい。



僕は体長三メートルほどの大きさのクモのモンスターと向き合い、そのモンスターを倒すため、右手に魔力を貯めていた。