「それじゃ、舞ちゃん、また明日ね」



「カノンは舞ちゃんのピアノを応援してます!」



愛理とカノンが舞に声をかけたのに続いて、桜介が舞に話しかけた。



「やっぱり舞ちゃんには笑顔が似合うよ。

舞ちゃんの笑顔は最高だぜ」



桜介のその言葉に舞はうれしそうに笑い、愛理は不機嫌そうに口を尖らせた。



そしてオカルト部に咲く一輪のバラはみんなに笑いながら手を振ると、ゆっくりと背を向けて部室から出ていった。



「舞ちゃんが元気になって良かったですね」



癒し系のカノンが笑顔でそう言うと、桜介もカノンの笑顔につられて笑っていた。



「そうだね、カノンちゃん。

舞ちゃんが元気になって良かったね」



愛理は桜介がカノンにまたデレッとした笑顔を見せていることにムッとして、桜介の頬っぺたをつねっていた。



「イテテテ……。

何だよ。

止めろよ、愛理!」



「デレッとしすぎ!

かわいい子なら誰でもいいの?」



「わかったから、頬っぺたをつねるの止めろよ。

痛いって、愛理!」



桜介がそう言って頼むと、愛理はようやく桜介の頬っぺたをつねるのを止めた。



そして桜介はちょっとうらめしそうに愛理のショートカットで勝ち気な顔を見つめていた。



「そんな顔で私を見ないの。

男は強くなくちゃだよ。

わかってる? 桜介」



幼なじみの愛理は幼稚園の頃、桜介よりもたくましかった。



小柄な桜介が友達にケンカに負けると、愛理はいつだって、桜介をかばって仕返しにいってくれていた。



たとえその相手が自分よりも強そうなときでさえも。



桜介はそんな愛理の強さに、自分にはない魅力を感じていた。