「ねぇ、みんな見た?

私、夢妖怪を一気に十体も倒したよ。

私って結構強くない?」



さっきまでの不機嫌がウソみたいに笑っている愛理に桜介は戸惑い、言葉を返すことができなかった。



(全力で夢妖怪を倒して、愛理の機嫌は治ったの?

愛理にとって夢妖怪を倒すことがストレス解消になっているのか?

やっぱり女の子の気持ちって、オレにはちょっとわからない……)



「愛理ちゃん、見てましたよ。

愛理ちゃんはとっても強いです!

本当にスゴいです!」



カノンはいつものように愛理のことを褒めていた。



カノンは基本的に他の人を褒めるばかりで、他人の悪口は決して言わない。



そんなカノンの性格があの癒し系のカノンの雰囲気を作っているのだろうかと、桜介はカノンを分析していた。



男子にあれほどの癒しを与えるカノンには他の女子にはない何かがきっとあるはずだと思うから。



「みんながそれぞれの属性を理解して、夢妖怪との戦いにも慣れてきたみたいだな」



今まで無口でいた時宗が久しぶりに話し始めた。



イケメン男子は自分の存在を回りにアピールしなくても幸せに生きられる存在であるらしい。



桜介がそんな斜に構えた感じで時宗のことを思っていると、誰とでも仲良しなカノンが楽しそうな笑顔を浮かべながら時宗に話しかけていた。



「時宗君、カノンも夢の中の世界に慣れてきました。

カノンの属性は癒しで、カノンの得意技は癒しのメロディです。

恐ろしい夢妖怪たちもカノンの癒しのメロディを聞いたら、溶けていなくなっちゃうんですよ」



カノンはそう言って時宗を見上げていたが、時宗はカノンをチラリと見ただけで、あまりカノンを気にしていなかった。



普通の男子ならカノンの魅力にデレデレしてしまうはずなのに、時宗はいつもクールで取り乱さない。



イケメンは癒し系美女を前にしても冷静でいられるんだと桜介は時宗を見ながら思っていた。