あやかしの集う夢の中で

「それじゃ、これでどうだ?」



時宗はそう言うと、ポケットの中から黒縁の丸メガネを取り出し、それを後ろからカノンにかけた。



するとその直後、カノンは少し顔を赤らめ、興奮気味に声を上げた。



「ああああ!!

見えます! 見えます!

時宗君が妖怪と戦っているところがバッチリ見えます!」



桜介と愛理は甲高い声を上げたカノンに目を向け、興奮しながら動画を見ているカノンを見つめていた。



「ねぇ、カノンちゃん。

そのメガネをつけると何が見えるの?」



「妖怪です!

緑色とか紺色とか赤色とか、いろんな種類の妖怪がいっぱいです!」



「ねぇ、カノンちゃん。

私もそのメガネをつけていい?」



愛理がそう言うと、カノンが興奮気味にうなずきながら、かけていたメガネを外し、それを愛理に手渡した。



愛理はそのメガネの目でよく確認し、感触を指でよく確かめた後に、そっとメガネをかけてみた。



「あっ、本当だ!

見えるよ。

時宗君が妖怪と戦っているところ!」



愛理は真っ直ぐな性格で、決して嘘をつかないことを桜介は知っていた。



その愛理が時宗君が持ってきた黒縁の丸メガネをかけた途端に、時宗だけが映っているはずの動画に見入っていた。



あの黒縁の丸メガネにはどんな秘密があるのだろうか?



桜介は二人のオカルト部員の様子を見ながら、そのことが気になっていた。