「あっ、時宗君だ!

時宗君はオカルト部に何か用事があるんですか?」



カノンはそう言って、キラキラした目で時宗を見つめていた。



そんなカノンの表情や声のトーンを総合して考えると、カノンが時宗に好意を持っていることが伝わってくる。



桜介は簡単にカノンの気持ちを動かしてしまう時宗に嫉妬しながら、ちょっと冷たい声で時宗にこう言った。



「ここはオカルト部の部室だぞ。

時宗みたいなハイスペック男が簡単に立ち入れるところじゃないんだぞ」



桜介がそう言い終わるとすぐに愛理の右手が桜介の頬に伸びてきて、桜介の頬っぺたを強くつねっていた。



「イテテテッ……。

何するんだよ、愛理」



「時宗君に意地悪なことを言わないの。

かわいい子にはすぐにデレデレするくせに、イケメンを見ると冷たくなるって、どうかと思うよ」



「わかったよ、愛理。

ごめん。

ごめんってばさぁ」



桜介が素直に愛理に謝ったところで、ようやく愛理の右手が桜介の頬っぺたから離れていった。



もう中学三年生にもなるのに、桜介は愛理にしょっちゅう怒られている。



その度に桜介は女は強しと思って、愛理の言葉に折れるのが常だった。