「あっ、近くに見えてきたよ。

舞ちゃんの大切な夢。

夢妖怪たちに囲まれて、どんどん光を失っている!」



目の前に見える小高い丘の頂上付近に、直径五メートルほどの巨大な球体が弱い光を放っていた。



あの巨大な球体から光が完全に失われたときに舞の大切な夢は消えてなくなる。



一ノ瀬中で一番気品のあるお嬢様、如月舞が奏でるピアノの音色は人の心を和ませる。



それはクラシック音楽をまるで知らない桜介にも当てはまって、桜介は自分とは別世界の才能を持つ舞に憧れに近い感情を持っていた。



そんな舞の夢が消え、才能が無価値になり、舞があの明るい笑顔をなくすのならば、それは舞だけの問題ではなくて、世の中にとっての大きな損失だとも思えてくる。



本当に平凡で何の才能もない桜介は舞のキラキラ輝く夢を応援したいと思っていた。



だって舞の夢はオカルト部のメンバー全員の夢でもあるから。



桜介がそんな思いを胸に全力で走っているとき、ついに複数の夢妖怪たちが桜介たちの存在に気づき、桜介たちに襲いかかってきていた。