「桜介!」



愛理はピクリとも動かず、うつ伏せで倒れている桜介を見つけて叫んでいた。



本当なら雪菜の冷気をまともにくらっている桜介が炎の技を使って戦えるはずがない。



おそらく桜介は無理をして炎の技を……。



愛理はぐちゃぐちゃに入り交じったいろんな思いを抱えながら、桜介の元に走っていた。



幼い頃からある桜介との思い出。



オカルト部でのティータイム。



ときどき叱ってあげないと、ダメになっちゃいそうな弱さと、誰にも負けない優しさを持っている自分の大切な幼なじみ。



愛理は桜介の元に駆けつけると、その場で膝をつき、倒れている桜介の頬を触った。



「冷たい……。

桜介が冷たいよ……。

このままじゃ、桜介が……」



愛理の心に不安と焦りが込み上げてくると、愛理は思わず泣いていた。



そして自分が何をすべきかわからずに、桜介を見つめているとき、桜介が少しだけ目を開き、弱々しい声で愛理に話しかけていた。



「愛理……、敵を倒したのか……。

やるじゃないか……」



桜介のその弱々しい声に愛理の心がざわめいた。



このままじゃ、桜介が……。



そんな最悪の絶対に起きてはいけない場面が愛理の頭の中をよぎっていく。



愛理はそんな不安な気持ちを抱えながら、桜介に話しかけていた。



「敵は倒したよ。

桜介が助けてくれたおかげで、私は雪菜に勝てたんだよ。

だから起きて……。

起きて先に進まなくちゃ……」



「悪いな、愛理……」



桜介はつぶやくようにそう言って、愛理に弱々しい笑顔を見せていた。



「オレは立てないよ……。

寒くて……、寒くて……、凍えそうだ」



「何言ってるの?

立てるよ。

立てるに決まってるじゃん!」



愛理が叫ぶようにそう言った言葉に答えることなく、桜介は目を閉じた。



その瞬間に愛理の心臓がドキドキと音を立てる。



そして愛理の心の声が絶対に桜介を死なせちゃダメだと叫んでいた。



(どうにかして桜介の体を温めなくちゃ……)



愛理はそう思って、桜介の体に寄り添った。



少しでも桜介の体が温まってくれるようにと……。