桜介と雪菜が繰り出す二つの技がぶつかったその瞬間、ドンという大きな音がした。



そして桜介が放った巨大な炎は雪菜の荒れ狂う吹雪を止めていた。



「坊やにしてはやるわね」



「子供扱いすんなよ。

これでも中学三年生だぜ」



桜介と雪菜が放った二つの技は力が均衡して、互いの中央で消し飛んだ。



愛理は現実世界では見れない桜介の頼りがいのある戦いに、思わず興奮して、声を上げていた。



「スゴいよ、桜介!

これがあのいい加減で情けない桜介だなんて信じられない!

これって奇跡?

桜介って、夢の中ではスゴいじゃん!」



「あのさ、愛理。

お前のその言葉ってさ、オレを褒めてる? それともけなしてるの?」



「褒めてるに決まってるじゃん!

桜介を褒められる機会ってほとんどないから、私は本気で桜介を褒めてるよ!」



「そうか……。

でも、何だかうれしくない……」



「私の吹雪を消し去るとは、やるじゃないか、坊や」



雪菜はそう言ってまた妖しく笑った。



「私は妖艶の雪女、雪菜様よ。

坊やでは私の技に耐えられない」



雪菜はそう言ってニヤリと笑ったあとに、段々と体の色が薄くなって、透けてきた。



そして雪菜の体は五つに分裂し、どれが本物の雪菜かわからなくなっていた。