直弘の体が階段の踊り場で停止したとき、止まっていた時間がようやく動き出した。


「直弘!!」


美奈を先頭に3人で直弘に駆け寄る。


「いってぇ……」


直弘は顔をしかめて右腕を押さえている。


ひどく打ちつけたのか、右腕を押さえたまま動かそうとしない。


「大丈夫? 先生呼んでこようか」


美奈の焦った声が聞こえる中、バタバタと誰かが走っていく足音が聞こえてきてあたしは顔を上げた。


直弘を突き飛ばした犯人が逃げて行ったのかもしれない。


「ここで待ってろ」


知樹が早口に言い、犯人を追いかけるために階段を駆け上がって行ったのだった。