「何を私に、謝るっていうんですか?」
「──“神獣の里”で、香火彦様から何か賜ったのではないか?」
「え? あの……はい。ええと、金色に輝く稲穂をもらいました。使い方は賀茂家──愁月さんに聞けって、言われて……」

思いがけない方向から話を振られ、ぎょっとしつつも、“神獣の里”からの帰りがけに猪子から手渡された時のことを告げた。
あの後いろいろとありすぎて、咲耶の記憶からも懐からも遠ざかっていたが、屋敷に大切に保管してある。

「そうか。やはり、何もかもご存じでおられたか……」

今度こそ確実に独りごとと分かるつぶやきをもらし、愁月は目を伏せた。

一瞬ののち咲耶を見つめた“神官”の口から放たれたのは、謝罪ではなかった。
この国の誰も知らない、真実。

「そなたは……本来、()ばれるべき者ではなかったのだ、咲耶」

──(はじまり)から秘匿された扉が、開かれる。