父は話が終わると、手をひとつ叩いた。


その合図に待機していた侍従達が動き始め、私達も神に祈りを捧げた後、食事を摂り始める。

しかし口にするもの全て、何にも味が感じられず美味しいと思えなかった。


作っている料理人は、一流の腕前を持つ人間。
絶対に不味いものを作るはずがない。

多分、私の味覚が父の話でショックを受け、おかしくなってるんだと思う。



そこまで私自身が弱い人間だとは思わなかった。


親の決めた人と結婚するなんて、昔から覚悟していたじゃない。

だけどこんなにも早く、相手の事も知らぬまま結婚なんて、どうしてこうも神様は残酷なんだろう。


せめて、外見でもどんな人なのか知りたかった。

もう少し気持ちの整理をしてから、国へと行きたかったのに。



私に残された時間は、あと5日。


短い時間の中で、私は出来る限り前向きに考えていかなきゃならない。