本当は、"つい愛おしくて"と言いたかった。

ありがとうの後に、"好きだ"とも言いたかった。



けれど、その言葉を告げる事が出来なかった。



私達は夫婦だから、抱きしめる事も、これから先、唇を重ねる事も身体の交わりもあるだろう。



でもそれは、夫婦としては当たり前の事であると、だから仕方なくミネアが受け入れているとしたら。

自分の告げた言葉に、思うような言葉を返してくれなかったら?



そう考えたら恐ろしく怖くて、どうしても言えなかった。


自分でも呆れるくらいに、情けない人間であると思い知らされる。

そのくらい、私はミネアの事を愛していると気付かされる。



――私を好きになって欲しいから。

――私を愛して欲しいと思うから。



頭を悩ませる問題は色々とあるが、ミネアが私を愛してくれるよう、ひとつひとつ解決していかなければ……。



「まずは、あの件からだな……」


「……何か仰いました?」


「いや、独り言だ……」



ミネアを抱きしめながら、私は決意を新たにする。


まずはセシリアの件。

これを何とかしないと、私の未来はない。



何としてでも、セシリアには諦めさせなければ……。