〈 百合子はもしかして、友だちの家で遊んでいるのかしら? 〉


私の頭の中にふとそんな考えが浮かぶと、私はその考えが正しいような気がして立ち上がった。


百合子の一番仲のいい友だちは、同じクラスの矢田朋子である。


私は携帯電話の電話帳から、矢田朋子の家の電話番号を調べ、電話を掛けた。


電話に出たのは、矢田朋子の母だった。


「あのう、うちの百合子なんですが、そちらにお邪魔してないでしょうか?」


「百合ちゃんは来てませんが、どうしました?」


「もう三時三十分だっていうのに、家に帰ってこないものですから」


「そうなんですか……。

あのう、ちょっとだけ待っててもらっていいですか?

朋子に訊いたら、百合ちゃんのことを何か知ってるかもしれないので」


私はその後しばらくの間、携帯電話を耳に当て、矢田朋子の母からの答えを待った。


何か、百合子のことがわかる手がかりがあることを期待して。


しかし、矢田朋子の母の答えは、私の期待に応えるものではなかった。


「百合ちゃん、うちの朋子と一緒に帰って来たみたいなんですけど、途中で別れたらしいんです。

百合ちゃん、学校に忘れものをしたから、一人で学校に戻ったって」