私がさっき、果物ナイフで、めった刺しにした立川早苗の悪霊は、いつの間にかその姿を変え、廊下に倒れていた。


私は、廊下にうつぶせで倒れている人物を見て、体がガタガタと震え、溢れ出してきた涙が止まらなくなった。


薄暗い廊下で倒れているその人の遺体を見つめ、私は、自分が取り返しのつかないことをしてしまったことに気づいた。


私は、握っていた果物ナイフを廊下にポロリと落とし、自分がしでかしてしまったことの重大さに悲鳴を上げた。


私が刺し殺してしまったのは、立川早苗の悪霊ではなかった。


私が果物ナイフを突き刺してしまったのは、私の一番大切な人。


私はこの人とやり直すために、約束した今日の日をずっと待っていたのに……｡


私はそう思って、うつぶせで倒れたまま動かない武士の体に覆いかぶさり、声を上げて泣いた。


ほんの数分前でいい。


サラサラと流れていく時間を、巻き戻すことはできないのだろうか？


私は今日まで、何のために生きてきたのだろう？


たくさんの犠牲者を出してまでも、手に入れたかった大切な人。


私はその大切な人を殺してしまった。


私は、自分がどうすればいいのかもわからず、声を上げて泣いていた。


血まみれで倒れている私の大切な人は、私がどんなに願っても、生き返るはずはなかった。