「お父さん、早くお母さんのところに行こう。

お母さんは、私たちを待ってる」


百合子がそう言って武士の腕を引っ張ったが、武士は歩くことができなかった。


武士は、この家には入ってはいけない気がしていた。


もしかしたら、自分はもう、小夜子に会うべきではないのではないだろうか?


「お父さん、早く!」


百合子が、武士の腕を強く引っ張った。


武士は急に、息が苦しくなり、うなされながら目を覚ました。