〈 小夜子! 〉


病院の屋上から落ちる瞬間、絹子は心の中で叫んだ。


絹子は最後に夢を見た。


自分が小夜子に手を引かれ、小夜子たちの家に行く幸せな夢だった。


〈 お母さん、ここが私たちの家なの。

そしてここが、お母さんの部屋よ 〉


小夜子がそう言って、部屋のドアを開けたとき、絹子はとても幸せだった。


やっと自分も幸せになれたのだ。


絹子がそう思って笑ったとき、絹子は全身にものすごい衝撃と激痛を感じた。


なぜ? どうしてこんなことになるの?


絹子がそう思いながら、自分にあてがわれた部屋を覗き見ると、部屋の中には、暗闇だけが広がっていた。


〈 小夜子…… 〉


絹子は、心の中でそうつぶやくと意識を失い、その意識が戻ることは、二度となかった。