「お母さん、ついに明日、退院できるのね。
体の具合は、もうどこも悪くないのね」

私は、弾んだ声で母に言った。

「小夜子、今まで心配かけて、たくさん苦労させてしまって、本当にごめんなさい」

「いいのよ、お母さん。
だってお母さんは、今までたくさん苦労してきたじゃない。
今までたくさん、つらい思いをしてきたじゃない」

「でも、小夜子……」

絹子はそう言って、言葉を詰まらせた。

「お母さん、もういいの。
昔のことなんて」

私は目一杯、明るい口調で母に言った。