黒愛−kuroai−

 


既に見慣れた彼の家に、感想を言った。



「わぁ!ここが先輩の家ですか!

先輩って、王子様みたいだから、お城に住んでいたらどうしようと思っていました。

普通で良かった〜!」



それを聞いて彼が笑う。



「アハハッ お城じゃなくて悪かったよ。

俺の親、共働きのサラリーマンだから、これが精一杯」



「うちも同じですよ?
庶民中の庶民です。

お金持ちじゃないけど、一生懸命働いてくれるから、私は両親を尊敬しています」




目の前の“ど庶民的面白みのない家屋”を見ながら、そう言って微笑んだ。



柊也先輩に頭を撫でられる。



「愛美は、本当にイイ子だよな…
心が白くて綺麗だ。誰かさんと大違い…」




“誰かさん”とは元カノだろう。

分かっているが突っ込まない。

折角の甘い初体験記念日に、元カノの話題を口にしたくない。




「誰もいないから、気楽に入って」


そう言われ、家に上がった。

開いている廊下の窓から、涼しい風が吹き込んでいる。

どこかの家のピアノの音も微かに聴こえていた。