黒愛−kuroai−

 


ファンは心底鬱陶しいが、優越感に浸れるのは楽しくもある。


練習前の気を引き締める時間も、彼女の特権として、彼の名を呼び駆け寄って行く。



「柊也先輩!
今日も頑張って下さい!」



「ん、ありがと」



「先輩、部活終わりにマック寄りませんか?
菜緒にクーポン貰って…」




ポケットから
“ポテトLサイズ100円”のクーポンを取り出し見せた。


すると、こう言われてしまった。




「あ〜ゴメン、帰りは友達の家に寄る約束してさ」



「また…友達と約束ですか…」




最近、やたらと友達付き合いを大事にされる。



俯いてむくれる私。

そうしたら慌てるかと思いきや、頭上から聞こえたのは溜息だった。




「愛美、最近寒くなって来たし、冬は練習見に来なくていいよ。

俺は動くから暑いけど、愛美は寒いだろ?風邪引かせたくない」




優しい言葉で、テニスの応援を拒否される。


風邪引かせたくない?

違う、そんな理由じゃないと思う。



まさか…

嫌な予感がした。



私に飽きた?

それとも、他に女が?



考え込む私の頭をポンポンし、

「今日は待っていても一緒に帰れない。愛美はもう帰りな」

と促された。