黒愛−kuroai−

 


途端に先輩の目が泳ぎ出す。

釣られて母親まで焦っていた。




「柊也 セ・ン・パ・イ?」



「そ、そんなことないよ。

たまーに、物凄くたまーに、もらうだけ。なっ母さん?

あの白い封筒の後、今日まで一度もないよな?」



「そうそう、ないない。
アレだけ。一度だけ」




ごまかす親子を見て、安堵していた。

私の疑惑はすっかり消えた。

形勢逆転。

望みのないファンレターに妬いたりしないが、話しが元に戻らないよう、少しだけ追及させて貰った。




その後リビングに呼ばれ、3人で食卓テーブルに向かい話しをした。



聞かれた事には笑顔でハキハキ答え、あとは聞き役に徹する。

控え目で明るく、笑顔が可愛い女の子。

そんな印象を与えるために頑張った。



この人は将来“お義母さん”と呼ぶべき人だから、気に入られておかないと。




夕方、彼の家を出る時、母親にこう言われた。



「愛美ちゃんってイイ子ね。
うちの愚息にもったいない。
是非、また遊びに来てね」




母親の審査は無事クリア。

必要な人間には好印象を与えることが出来る。

それも私の特技の一つ。




帰り道、街は茜色に包まれていた。

長く伸びる影、オレンジに染まる建物。

夕焼け空を仰ぎ見て、一人ほくそ笑む。




カレは私の手の平の上。

面白いほど、順調だネ…