「美心、大野くん、次移動教室だよ?」
奈々ちゃんが笑顔で声をかけてくれる。
この前のことなんか、何もなかったみたいに。
「うん、ありがとう」
あたしは笑顔で返事をする。
奈々ちゃんのおかげで、あたしは少しずつだけど、彼女の友達と話ができるようになってきていた。
だけど……なんとなく、自分から距離を置いてしまっている。
あまり、仲良くなりすぎないように。
この前みたいに、あたしの近くにいたせいで、誰かが憑依されたりするのはもう見たくないから。
「ねえ、あたしもオロチ探しに協力してもいい?」
突然ぼそりと言った言葉に、雷牙は持っていた書道セットを落としそうになる。
「なに言ってんだよ。
お前は狙われてる当事者だろ」
「だからだよ。
他人に任せてばかりじゃ、いけないと思うの」
見上げると、雷牙は一瞬驚いたような顔をした。
かと思えば、すぐに頬をゆるめる。