いつもと違う洋くんに、この時気づいていればどれだけよかっただろうか――― 何度思ったのだろう。 いつもの洋くんなら、 「今日滴の家に寄っていい?」 「滴んちに行っていい?」 「滴の家で遊びたーい」 とかで、大学生の貫禄なんて見えない。 それなのにこの時は、大学生と思わせる誘い方に気づきはしなかった。 「今日は遅いらしいよ。 上司に残業任されたんだって。 お父さんは飲み会だから。 きっと明日になると思うけど。 何で?」