「コウあたりのオヨメサンに」
「――――ぶはッ」


至って真面目な顔で最後まで言うもんだから、本当にそういう人なのかと思って吹き出した。


「うわ。ミカ、きたなーい」
「し、仕方ないでしょッ! なんならチハルのせいだから!!」
「えー」


私の様子を見て、わざと“引いたように”言うチハルを、キッと睨んで言い返す。

チハルはケラケラと面白そうに笑って、「ミナトでもいいかも」って付け足してるあたり、どうやらジョークのよう。

楽しそうに声を上げていつまでも笑うチハルを見て、なんだかこっちまでつられて笑ってしまう。


「もう。笑いすぎだし、チハル」


そう言ってテーブルの上を片づけてると、チハルの笑い声が止んだことに気がついて顔を上げた。


――――え。


見上げたらそこには、すごく優しい目をしたチハルが私を見下ろしてて。
“目が離せなくなる”ってこういうことなんだ、って思った。


……なに、見つめ合ってるの、美佳!
ほら、早く食器持って、さっさと台所に立ちなさいよ! これ以上チハルを見てたら変に思われるでしょ!


心で自分にそう指示するけど、なかなか思うように身体を動かせない。