音をたてないようにしてドアを開ける。
しん、とした室内は、もしかしたら本当にミカは寝てるのかも、と思った。

ミカが席を立って、すぐに気にしたのはチビコウだ。やっぱりチビコウも、コウもミカがお気に入りらしい。


『寝不足みたい』。


つらっとそんなウソをついた。
なんとなく、ミカをそっとしておいてあげたくて。


いつものクセなのかな。
ミカは、部屋の扉を完全に閉めない傾向があるって気付いた。

その隙間から、気付かれないように美佳の様子を窺う。


こんなんじゃあ、なんか盗み見みたいだ。
いや、“みたい”じゃなくて、実際にそうか。ま、もう見ちゃったものは仕方ないよね。


心で都合のいい肯定をしながら、細長い視界に僅かにミカを見る。


……勉強かな。


机に向かって、ノートと参考書みたいなの広げて、ペンを手にしてる。

その何気ない“日常”っぽい姿に、なぜかホッとして、その場から離れようかとしたときだった。

ピリリリッと音が鳴って、思わず声が出そうになった。

両手で口を押さえて、目を大きくしたままミカを見続ける。

着信音がなった瞬間、ミカの表情が変わった。
――なにか、期待するような、待っているような一途な瞳。

だけど、その思惑が外れたんだろう。


……あからさますぎだよ、ミカ。