「チハルー。なんか面白いことして?」
「はぁ? なんだよイキナリ。自分ですればいいだろ」
「我が兄ながら、つまんないわぁ」
「アーキーラー……」


呆れたようにしたチハルなんて、初めて。

無理ないか。なんか、この短時間だけど、アキラってちょっと自己中心的な感じのときがあるし。

って、そんな言い方って、なんだか悪口みたいでダメだよね。


「ああ。じゃあやる? トランプ。昨日もやってたけど」
「オーケー! セイジッ」


――だけど……。


「セイジもそろそろ部屋に入りましょうよ」


どうしても、素直にアキラを好きになれない自分がいて。


「いーよ、俺は」
「ダーメ!」


聖二の隣を占領する赤い服が、直視出来ない。


「――ミカ?」
「あ、ちょっと先戻るね。チハルはいて」


おもむろに立ち上がった私に、声を掛けてくれたチハルを置いて、そそくさと綾瀬家をあとにした。


だって、チハルにさえ、上手く笑えない。