「へー。じゃあ、日本語とイタリア語と両方教えてるんだ。僕も習おっかなぁ」
「コウシロウがスクールきたら、たちまち女子生徒の人気者ね」
「んー。でも、僕そういうのめんどくさい」
「Oh! コウシロウって、ギャップあるのね」


お昼までの時間、別になんにもすることはなくて。
私たちは、ただリビングでお茶を飲みながら雑談していた。


……『私たち』っていうか、主にアキラと孝四郎くんだけど。


「そのギャップに女の子はやられるわ」
「そうみたいだね。でも僕、最近、本命出来たから」


ちらっと視線だけをこちらに向ける孝四郎くんと、ばっちし目が合ってしまう。


きゃああー! その流れでこっちを見なさんなっ!


「え? そういうこと?」
「そーいうこと」


ぎゃああ! ほらっ! アキラに即バレじゃないのッ!
大体、目の前にそんな美人がいて、隅にいる平々凡々な私がいいっていう状況に疑問を感じるよ!


「ふーん。でも……」


アキラはそういい掛けて、ベランダで背を向けてる聖二に視線を向けた。
そのあと、ちらっと私を見た気がしたけど……気のせいかもしれない。

私で視線を止めることをしなくて、私の隣にいたチハルを見たから。
だから、その流れで“私を見た”って勘違いしちゃってるだけなのかも。


わけもわからないドキドキを隠しながら、ただ私は黙り続ける。