しげしげと二人を見てると、アキラは聖二が隣にいなくなったのに気付いて追いかける。


「セイジ! わたしもお邪魔していいかしら?」
「……もう入ってんだろ」
「Oh,ほんとだ! ふふっ」


さりげなく腕を絡ませるアキラの後ろ姿に、自分の居場所がない感じがする。

そんなとき、孝四郎くんがリビングに向かいながら楽しそうに言った。


「へー。聖二にぃ、なかなかお似合いだよー」


孝四郎くんは、ただ、いつもの冷やかしを織り交ぜたように冗談を言っただけ。
だけど、その何気ないひとことがやたら胸に突き刺さる。

だって、そんなの、誰に言われなくても、私だってそう思ったことだもん……。


黒っぽい服装で大人感がある聖二に、華やかな色遣いの服を纏って並ぶアキラ。
背丈も聖二の耳あたりまである、スタイルのいいアキラは、見ていて本当に絵になる。


ぎゅっと手を握りしめて、その後ろ姿から目を逸らしたときに頭にぽん、となにかが触れた。


「――はいろ?」


見上げると、独特の柔らかな瞳を向けたチハルがいた。


不覚にも、ドキッとしちゃったじゃない。


ドギマギとしたままの私を、まるでエスコートするように手を引き、腰に手を回される。


い、いやいや! たかだか人の家に入るのにここまでしなくてもいいって!
しかも、ここ、別にチハルの家でもないのにっ。

あ。そうか。イタリア文化? そういえば、イタリアの男の人ってそんなイメージ。


すぐ横に接触しながら歩くチハルを見上げる。
私の視線にすぐに気付いたチハルは、にこっと笑い返してきた。


「あわわわ……だっ、大丈夫! ここ、日本だしっ」


そう言って、私は飛び退くようにチハルから離れた。
そんな私を、きょとん、とした目で見たあと、チハルは無邪気な笑顔で楽しそうに言った。


「ふ、あははっ! ミカ、なに? 『ここ日本』とか!」


お腹を抱えて笑うチハルに、自分が口に出してしまったことが恥ずかしくて赤面する。
あまりに楽しそうにチハルが笑うから、その笑顔に引き込まれて、さっきの聖二とアキラのことを忘れてた。