「あがりー」
「またお前かよっ」


チハルがしたり顔で言うと、三那斗がすかさず突っ込みを入れる。


「ミナト、わかりやすーい」
「てんめぇ……次こそヤッてやる!」


なんつー発言してんだ、三那斗!

大マジな三那斗の視線と発言にびくともせず、むしろけらけらと横で笑うチハル。

そしてそんな二人に構わないかのように孝四郎くんがカードを集め、「いつまで続けるのー」なんていいながら、つまらなそうな聖二を含め、4人にまたカードを配る。


「オレが勝つまでだっ! チハル(こいつ)にっ」


三那斗が超真剣に孝四郎くんに返した。

すると、孝四郎くんは盛大な溜め息と共に言う。


「三那斗……僕や聖二にぃにすら勝てないでしょ」
「うるせぃっ! 勝負は最後までわかんねーんだよっ」


『勝負』って……。
そんなに本気になるほどのものなの、三那斗……。


「Ha,ha-! いいね! そのアグレッシブな感じ! 受けて立つー」
「てめぇ……そうやって笑ってられんのも今のうちだからな!」


チハルが楽しそうに三那斗のカードに手を伸ばすと、三那斗は、やっぱり超真剣に……というか、超ガン飛ばすような感じでチハルを見る。


「やった。一組、ぽいっ」
「……くそっ」


チハルがひらひらと2枚のカードを輪の真ん中に捨てる。


「なんか十数年ぶりに再会したとは思えない光景だな」


後片付けや明日の準備を終えた浩一さんが、私が座るダイニングテーブルに来て言った。


「あはは。ほんとですね」


私は笑って浩一さんに答えると、また4人が座る隣のテーブルを見た。


「はい。ぼくラストー」
「ぐあ! またかよ! 孝四郎! 阻止しろ、阻止!」
「……三那斗バカ? 僕が引かなきゃなんないんだから、チハルはまた“あがり”ってことだよ」


冷ややかな口調で孝四郎くんが言い放つと、チハルはまたもや「あがりー」と笑顔になった。


「ねーねー。コウもミカもやろー」
「ああ」
「あ。私はもう、こんな時間だし……そろそろ」


チハルの誘いにハッとして時計を見たら20時過ぎ。

私はその場で「ごちそうさまでした」と言って立ち、帰ることにした。