「あー…疲れた…」


受験生である学年だから、それなりに勉強は気を抜けなくて。

かといって目標も定まってないからモチベーションもどう保っていいかわかんない。


バスを降りて、マンションへと向かう。

朝から綾瀬家と交流して、学校で授業を受けて、帰宅する。

家にはほとんど誰も居ない。

お父さんとお母さんは仕事で出突っ張りだから。


それでも、ここに引っ越してきてからは寂しさはほとんどなくなった。
元々慣れてはいたけど、それでも完全に寂しさは埋められなくて。

そんな時に支えてくれたのが綾瀬家だ。


夜ご飯を自分で用意して、それを平らげる。
一人きりのリビングでだらだらと過ごしていると、ベランダから『カララ』という音が聞こえる。


―――帰ってきた。


その音を聞いて、私はソファから立つ。

そしてベランダに出ると、いつもの匂いがする。


「―――おかえり」
「…ただいま」


そんな普通の挨拶ですら妙に照れる。

これが例えば浩一さんや三那斗だったら、こんなに照れることもないだろうに。


綾瀬家に支えられてる私。

そして、心を占めてるのがこの男―――。


「今日は早いんだ、聖二(せいじ)」