それから教室へ入ると、もう一人のお隣さん。
「おす」
「おはよ」
デカイ体で眠そうに席について挨拶を交わすのは綾瀬三那斗(みなと)。
三那斗は夏まで部活がある為、大抵朝は練習で早い。
教室でも隣、家でも隣っていう物凄い偶然の相手。
「ああ。三那斗、これ預かってたんだ」
「おお!サンキュ!助かったー」
私は三那斗に紙袋を渡した。
それはさっきエレベーターに乗る前に三那斗のお兄さんにあたる浩一さんから預かったもの。
それを受け取った三那斗は早速ガサガサと中身を確認して取り出した。
「いただきます!」
キリッとそう言って三那斗はおにぎりを頬張る。
そんな三那斗が可笑しくて笑っちゃう。
「…あんだよ」
「いや…あんたって本当、和むね」
「―――和むんじゃねぇ。ドキっとしろ」
「ばっ…!」
―――そう。
何を隠そう、この三男・三那斗もどういうわけか私に好意を持っている。
しかもコイツがまたストレートだからやりにくい。
「もう!そういうの真顔で言わないで!」
ガタンと顔を赤くして私は席を立って三那斗に怒る。
「朝から仲がいいですなぁー」
「真夏の前に暑いんですけどー」
そんなクラスの冷やかしもありで、私の顔はますます赤みを帯びる。
憎たらしい隣の三那斗はもう慣れたようで…
「うっせ。その辺で焼けてろ」
こんな調子で否定もしないから余計“公認”みたくなっちゃって。
「ち…違うのに…」
そんな私の独り言は誰にも届いてない。