「…たまたま、そういう気分だっただけだ」


聖二はそう言って水を飲み干して、食器を手にして私を横切ってキッチンに行ってしまう。

そしてシンクに食器を置くと、聖二はまたソファへと向かって腰を下ろした。


それって、要するに、あれだよね。
ちょっと“特別”的なもの、感じてもいいんだよね。

たったこれだけのことだけど、すごくすごく嬉しい気持ちになるのはやっぱり聖二が好きだから。


「せ―――」


ガタン!


私が聖二に声を掛けようとしたときだった。


ガタガタッ…ズズッ…


隣の家からそんな奇妙な音が聞こえてきて全員が目を合わせる。


「…何の音だ?」
「何か、引きずるような…」
「物を動かしてるような―――」
「隣の家から、聞こえる気がするけど」


それぞれが恐る恐る、今の状況を口にする。


と、隣の家…?
それって―――――!


みんなが視線を向ける方向は、私の家!!


「ど、ドロボウ…?」


ぎゃーーーーー!!!!