「ただいまー」
「お邪魔します…」


孝四郎くんのあとに続いて靴を脱いで上がる。

なんだか本当にこれで良かったのかな…なんていまさら思っても遅いんだけど。

足音を立てないようにそっとリビングへと入る。

すると、お決まりの場所にアイツは転がっていた。


あ…やっぱまだ寝てるんだ…。


黒髪の頭頂部に視線を注いで思う。

軽く腕を組むようにして、すーすーと心地よさげな寝息を立てて。


「まぁだ寝てる」


聖二を覗きこむようにして孝四郎くんは言った。


「あ、今日浩一さんは?」
「浩にぃ?ああ、なんか仕事に行くって言ってたかな」
「え?休日なのに?」
「とか言って、デートとかだったりしてね!」


孝四郎くんはわざとそんな言い方をして一人掛けソファに腰を下ろした。


「あ、でもお昼には帰るって言ってたかなー」
「そうなんだ…あ、三那斗は?」
「三那斗もきっとお昼には―――」


その時、勢いよくガチャッと玄関の開く音がした。
その開け方で大体見当がつく。


「あちぃー!ただいま…ってあれ?」


玄関から騒々しい程の声。
そしてバタバタと私たちのいるリビングまで近づく足音。


「やっぱり!」


ドアを開け放つと同時にそう言ったのは三那斗だ。


「『やっぱり』って…」
「いや、玄関に見なれねぇ靴あったから!何?なんでいんの?!」


呆れたように言う孝四郎くんを見もせずに、私を見て三那斗はうきうき顔で聞いてきた。


「―――お昼、一緒にすることになって」


至って、冷静に返事を返す。

…でも、こんな風に明らかに喜んでくれてる姿っていうのも、悪い気分にはならないな。なんて思ったのは秘密。