ガタン、という音がたまに聞こえてくる。
その普段は聞かない音で目が覚め、ベッドから出た。

そっとリビングに顔を出すけどそこには誰の姿もない。
けれどまた、ガタッと音がしたから、遠慮がちにチハルの部屋に近づいて声を掛けた。


「……チハル?」


声を掛けたのになんの応答もない。いや、なんか聞こえてないだけかも……。

そうは思ったけどなんだか心配で、そっとドアを開ける。
すると、私の姿に気付いたチハルは、いつもの笑顔になった。


「Buon giorno! ミカ」
「お、おはよ……って、なに……してんの?」


ドアの隙間から見たときにはあまりわからなかったけど。
チハルがこっちを見たからもう少しドアを開けると、部屋の中にはダンボール。


「えっ……チハル……もしかして」


帰っちゃうの?イタリアに?

突然の事態に頭は混乱する。
確かにこのままここにいられたら、聖二の手前、私も困ることはあるんだけど。
かと言って、お父さんとの約束で来たチハルに罪はないし、だから簡単に追いだすことも出来ないとは思ってたけど。

だけど、実際にこうしていなくなるような光景を目の当たりにしたら、純粋に〝淋しい〟って感じる。