私を見下ろす聖二の視線からは、どう頑張っても逃れようがない。
観念した私は、ぼそりと口にした。
「う……わ、笑わない?」
「……さぁな。お前は常におかしいから」
「もう!」
「冗談だ。なに?」
「なに?」って言い方がすごく優しくて、そんな些細なことにドキッとする。
おずおずと立ち上がり、恥ずかしさをごまかすように俯いて一気に話す。
「私……メイクの勉強……しようかと思って。そういう仕事、いいなって……最近思って。だからそういう専門学校の見学に……」
ほんの僅かの経験だった。
でも、チハルの現場に行って、私もメイクをしてもらったときの気持ちがいつまでも残ってて。
あんなふうに自分を含め、誰かを素敵に変える技術があれば、楽しいんじゃないかな……なんて。
すごくうれしかったあの気持ちを、私も自分の手で与えられるならすごくやりがいありそうだなって思ったから。
でも、現実は今の今までなんの洒落っ気もないこの私が、そんなこと言ったら笑われそう。
肩を竦めて聖二の出方を恐る恐る待つ。
ちらりと顔を窺い、目が合うと聖二は目を細めて言った。
「いーんじゃないの?かーさんにも通ずるものあるし、助けてもらえんじゃん」
「ほ、ほんと?」
「別に俺の許可なんて要らないだろ。……じゃあ、きっかけくれたチハルに礼言わないとな」
「――うん」
そうなんだよね。
チハルには「ありがとう」って伝えることばっかり。