あー疲れた。
昨日早退した分、きっちり仕事残しとくとか鬼すぎる。

首を回してコキコキと鳴らしながら、玄関を開けると想像以上の賑わいぶり。


「おー、おかえり、聖二」
「ああ……」


アニキがいつものようにひょっこりと顔を覗かせてそういうと、すぐに居なくなった。
足元に視線を落とすと、明らかに家族以上の靴の数。
その中から美佳のものも見つけると、なんだかちょっと緊張のような感じもする。


……昨日はホント、自分でも〝らしくない〟ほど態度に表した気がして。
めいっぱい平気な顔してるんだけど、実際アイツに勘付かれてないのか心配だ。

……この今にも顔に出てしまいそうな動揺を。


「セイジ!」


一歩リビングに足を踏み入れた途端に聞こえた声。

……アキラ。
まだこいつ、飽きもせずになんかするつもりか?


疑いの目で俺に近づくアキラを見ると、一瞬目を大きくしたあとに溜め息混じりに笑った。


「セイジったら……あからさまね?そんな心配するようなこと、もう言ったりしないわよ」


そういうアキラの表情や雰囲気から、それが本当だとわかると少し警戒心が解ける。
アキラの身体越しに見えたアイツの姿。

なにやら真剣な顔をしてるけど。
なにしてんだ、アイツ。